YOSHITO ISHII:ROTRINGER'S DIARY

日日是匍匐:時時跳躍

田中一村展 奄美の光 魂の絵画@東京都美術館

 

 

 

 

田中一村展 奄美の光 魂の絵画@東京都美術館

 

 

日曜美術館効果もあってか、

平日だというのに高齢者とおしくらまんじゅうである。
日本画で奄美の自然を描くという意外性や
すべてを捨てて奄美に渡り絵画三昧の日々を送って孤独に亡くなった孤高の画家、
という、いかにも一般ウケしそうな彼のストーリーによるところが
人気を博している要因なのでしょうか。
勿論、作品自体の魅力も大きいのでしょうけど。
 
 
ようやく彼の作品を生で観られ、実際素晴らしかったのですが、
個人的には彼が10-20代の頃に描いた南画が気になりました。
 
 
 



筆が奔りまくりな、若者らしいやりすぎ感。
大体南画というか文人画は賛を描くために
上方を空けておくものなのですが、
完全に埋まっちゃってます。
対象を描くことに集中し過ぎて、
画面構成が疎かになっちゃう感じ。
 
彼は幼少の頃から「神童」と呼ばれたといわれますが、
こういう作品を観ると、小器用な神童というより
ちょっと不器用な人だったんじゃないかという印象。
 
そしてこの未整理ともいえる画面が紆余曲折と幾度もの挫折を経て
奄美の自然の中で整理された作風として花開いたという、そんな印象。
実際、こういう組み合わせ方をしてよいのだ、なぜならこれは絵だから、
という開き直りというか閃きがきっとどこかであったんだろうな、と思いました。
そうなったら水を得た魚だったのでしょう。
 
 
自分の作品を自分で認める。
これでよいのだ、という確信を得る。
 
 
こういう、自分自身に確信を持つ作業を孤独の中で為すことは大変なことです。
人はだれでも誰かに認めてもらい、安心したいもの。