星野美智子全版画集
リトグラフと写真製版、あとCGも。
ボルヘスというアルゼンチンの小説家の小説から着想を得た作品だそうです。
生憎不勉強で名前さえ知りません。マジックリアリズム、だそうな。
(ガルシア・マルケスとかそのへんらしい。莫言なら数冊読んだことあるのですが)
タイトルも抽象言語のオンパレードですが、
観る側はあえてそこに拘ることもないでしょう
(作家の解説でも聞かない限り、理解のしようもありませんから)。
それにつけてもリトグラフという技法はしみじみと良いものです。
水彩の淡さと油性インクの強さを併せ持つもの。
リトグラフや銅版画など版画作品を観ていると学生時代を思い出します。
3年次から選択した版画コースで教授からずいぶんダメ出しをされたものでした。
とにかく版画はまず版を作り、まともに刷れなければどうしようもありません。
「何を表現したいか」なんて二の次です。
技法があってその後から表現したいものが出来てくる。
特に若い頃など、技法をまともに使いこなせない内から
なまじ「描きたいもの」なんかあったりすると本当に難儀します。
その表現の持ち味をうまく活かせず、
情熱に任せて力任せにゴリゴリやるしかなくなる。
「表現したいものが先にあって、それにふさわしい表現技法を選択する」
という考え方がありますが、そんなことができるのは
よほど経験の豊富な人か理路整然と考えられる人か
いろんな技法を試せる人(これとて相当時間を費やすことになります)
のどれかで、おそらくほとんどの作家はそうではなく、
まずひとつの表現技法が先にあり、そこをとっかかりに表現したいことが
まとまってゆくものだと思います。
自分としてはやはりひとつの表現を地道にやっていき、
そのうちに自分の方向性がうっすら見えてくる、
というのがいいのかなと思っています。
鶏が先か卵が先か。