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吉例夏夜噺 さん喬・権太楼 特選集

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吉例夏夜噺 さん喬・権太楼 特選集

以前はよく行っていましたが、

ここ数年はご無沙汰でした。久々に。

 

お目当ては権太楼師匠のキレ芸が冴えわたる「鰻の幇間」。

前回聴いた時より師匠が楽しそうでよかった。

「よっしおちゃん!メンコは表でやんなさいって言ったでしょ!」

 

さん喬師匠の「福禄寿」は、残念ながら思いっきり船を漕いでしまいました。

(だって師匠、小声なんだもん‥寝ちゃうよう‥)

 

 

 

 

 

この興行がすごいのは大ベテランのお二人に加え、

喬太郎・菊之丞・一之輔というスタークラスの師匠が揃う上に

上方落語の露の新治師匠が参加すること。

その新治師匠は一度生で聴いてみたかった「親子茶屋」。

親子は親子でも「親子酒」ではない、構図は同じですが。

 

昔、桂米團治襲名を扱った「情熱大陸」の番組内で

「襲名披露では何をなさるんですか」というスタッフの問いに

米團治師匠が「米團治の十八番は『親子茶屋』なのでそれを」

と言った途端、生前の米朝師匠が「あんなんむつかしい噺やないか・・」

と仰っていたのが印象に残っています。

実際、登場人物が多くお座敷遊びの場面で「はめもの」(音曲)も入るので

素人目にも難しそう。

茶屋遊びをやめられないにたもの親子って、いかにも上方ですよね。

御座敷遊びをあんな具体的に描いた落語って江戸落語にあるだろうか。

 

一之輔師匠の大改変の「反対俥」。

オリジナルの反対俥とはかなり違う噺(そもそも人力車が前へ進まない)。

車夫のおじいちゃんと孫のちぃちゃんへの暖かい眼差しが

噺のバカバカしさにほんわかさを加えている、すごくいい改変。

おじいちゃんのキャラ造形は白鳥イズムが混ざった感じ。

 

柳家喬太郎「えーっとここは」。

「この場所って、前は何の店だったっけ」という、

あるあるから始まる新作落語。

だんだんテンションが上がっていくキャラ造形に、

オムライスやら立ち食い蕎麦やら世代間ギャップやらで

これこそ柳家喬太郎の新作という感じですが、

「路地裏の伝説」にも通ずる不思議な後味です。