春風亭一之輔独演会@葡萄屋寄席
「めがね泥」「ふぐ鍋」「うどん屋」。
マクラで「余白」ということを仰っていたが
「うどん屋」って、なんとなく余白的な噺である。
笑いどころは少ない。
冬の夜、屋台のうどん屋が酔っ払いにからまれ住人に売り声を注意され、
それから大店の奉公人にうどんを一杯売るという、ただそれだけの噺。
それぞれの小噺に関連はない、オムニバス的。
後半はうどん屋と奉公人の小声でのやりとりがあり、
うどんを啜る描写があっておしまい。
この噺は冬の夜の静けさ、空気感を描く噺であると思う。
絡んでくる酔っぱらいのくどさやうどんを啜る描写、
売り手と買い手の小声でのやりとりなどは
冬の夜の静けさ寂しさを強調する要素に過ぎず、
それらが深い暗闇にぽっと現れては夜の静けさに吸い込まれる。
そういうお吸い物みたいな噺である。