YOSHITO ISHII:ROTRINGER'S DIARY

日日是匍匐:時時跳躍

山内多門図録



山内多門画集
 
橋本雅邦・川合玉堂に師事した宮崎の画家。
玉堂曰く「北宗系の健筆を振るう一人きりの大切な存在」。
数多いたであろう玉堂の弟子の中で一人きり、というところが泣かせる。
白黒の図版の岩の描写とか実に中国絵画的、
ちょっと袁派な感じです。
 
この方も54歳という若さで卒してしまいました。
同じくこの図録の中で小林源太郎という人が彼の作品を評して
「彼の北宗の筆技と顔料殊に岩絵具の装飾的効果との矛盾は
 遂に容易に彼のうちに調和することが出来なかった」
と述べていますが、猶更早世が惜しまれます。
狩野芳崖や橋本雅邦の方向性を引き継いで発展させてほしかった。
 
逆にいうと、昭和の初めにはこういう四条派というか
中国式山水を描く作家はもう地方くらいにしかいなかった、
ということなのでせうか。