YOSHITO ISHII:ROTRINGER'S DIARY

日日是匍匐:時時跳躍

電子書籍VSクリス・オフィリ

内田樹さんの新著「街場のメディア論」読了。
電子書籍に関するご意見がすごく興味深い。

電子書籍のシステムを作った人は「本棚」の効用を
考慮に入れてないんじゃないかっていう。
要するに、書籍のデータだけに気を取られてて、
本という「ものそのもの」が人の心に与える影響を甘く考えているんじゃないか、と。


た・し・か・に・な・あ・・


わたくしは自分が絵を描いている性格上、
作品集や画集を収集するのが学生時代からのちょっとした趣味でして、
こないだも思い切ってクリス・オフィリの
(アフリカ系イギリス人の美術家。すっごく装飾的な極彩色の画面の中に、自身のルーツでもあるブラックカルチャーへの大いなる賛美を込める。象さんのウンチを多用する)
でっかい作品集を五千円で買いましてん(貧乏人には死ぬほど痛い出費・・)。

でもしみじみ、買って良かったなあと・・
重い作品集を畳の上に置いて、上質な紙に印刷された作品を
ゆっくり眺めるのはやっぱりすごく贅沢な時間なんですよね。

作品集をわざわざ高いお金出して買う人間て、
おそらくそのほとんどの人が、作品集という「ものそのもの」を
愛しているんですよね。
そうやって地道に集めた作品集を本棚に並べて
悦に入るのもまた贅沢な時間でしてん。


ここまで書けばもうお分かりですね。
電子書籍は美術書籍にゃ手を出せない。・・多分。
少なくともわたくしは買いません、そんなもん。
あじけない液晶画面で偉大な作品見たってなにがおもろいもんか。
そんなとこまで効率化しなくて良し。

わたくしが大枚はたいても手に入れたいのは、
出版社が性根込めて丁寧に作った作品集という「ものそのもの」なんです。
こういう人間、結構少なくないと思うよ。
(あとは図鑑とかもそうかもね・・)


勿論、電子書籍という技術を否定する気はまったくないし、
ある方面ではすごく役に立つものだと思いますが、しかし。


誰かが言っていた、
「インターネットの世界にはまだ、ダ・ヴィンチが出てきていない」
という言葉をはからずもまた、今回も
証明することになってしまったんではないかと。
優秀な技術者は沢山いても、文化的・精神的なところにまで
目端の行き届く「ダ・ヴィンチ」がまだいない。