現代彫刻アンソロジー。
掲載作品は殆どが木彫で後は金彫とミクストメディア。
日本では古来彫刻といえば木彫が中心で他は鋳造した仏像などが主ですが、
21世紀の現代でも特に木彫の良品が目立つことが不思議です。
木彫・具象、そして動物をモチーフにした作品の多さ。
善し悪しは別にして今の時代の彫刻の特徴をよく象徴していると思います。
20年前ならば、紙面の半分以上を抽象彫刻が占めていたでしょう。
そして現代彫刻におけるブロンズ作品の存在感のなさ。
小谷元彦さんの近作の一部がブロンズ(?)ですがそれだけです。
本書中のテキストでも指摘されていますが、
現代の若い彫刻家の木彫回帰とでもいうべき状況と
日本の街中で設置されているロダン風のヌード彫刻とは実に対照的です。
確かにあれらの退屈なブロンズ彫刻は日本が受け入れることのできなかった
西洋彫刻の残滓なのかもしれません。
木彫も勿論良いですが、みんなが使っている素材を今からチャレンジして
頭一つ抜け出すことは容易ではないわけで、
逆に今、若い作家がブロンズで面白い作品を作れれば
チャンスといえるでしょう。