東博常設展の日本刀。
それぞれ詳細な銘は忘れましたが、
備前長船系の刃紋の美しさ。
東博の中国絵画の中で最大の絵画作品、
清・袁耀の廬山瀑布図軸。
今回東洋館(アジアギャラリー)の常設展に出ている
という話を聞きつけ、高速バスに乗り込み行ってきました。
大作だけあって、想像していたよりも筆致は荒い。
しかし樹木や荒ぶる川面は時間をかけてじっくり細かく描かれ、
それに対して岩肌はかなりスピード感のある筆致でした。
岡倉天心はこのテの山水画が嫌いで、
「つくね芋山水」などと揶揄したそうですが、
こういうマニエリスム的なくどい表現が嫌いだったのでしょうか。
個人的には彼の提唱した朦朧体(この呼称自体蔑称だそうですが)
よりもはるかに好きです。
東洋館はいつ行っても人がおらず(中国系の若者グループがいたのみ)、
今回も心ゆくまで鑑賞できました。
会ったこともありませんが、
心から敬愛する作家というのがおりまして。
日本のミヅマギャラリーに所属する中国人作家・杜昆もそのひとりです。
彼のことはミヅマギャラリー・オーナーの三潴末雄さんの著書
「手の国の鬼才たち」で知り、一目で魅了されました。
元々ロックスターを山水画に見立てた大きな油絵作品で
有名になりましたが(彼自身がミュージシャンでもある)、
今回のミヅマギャラリー(シンガポール)での個展では
なにかの音波(彼の愛する音楽でしょうか)を山水画に見立て、
それを絹本着色で6ⅿもの作品に物しています。
中国のアートというと、
保守的な伝統絵画と現代アートがどうにもぱっきりと分かれている印象があり
(その辺は日本も変わりませんが)、
伝統絵画は技術的には素晴らしいものの穏当な題材ばかり、
逆に現代アートの方はワンパターンだったり毒々しいばかりの作品も多く。
このふたつがうまいこと組み合わせられた作家がいればなあ、
と思うことしばしばなのですが。
現代的なコンセプトを伝統絵画の技術に託して表現する、
こういう中国人作家をずっと待ち望んでいました。
いちファンとして、日本での個展で彼の作品が観られる日を
心より待ち望んでいます。