陳少梅(陈少梅)絵画全集
この人も民国期の画家です。
1909年生まれで太宰と同い年。
南方らしい、端正な筆致と階調。
中国の画家にとって古典の模写は欠かせないそうですが、
この時代は革命のごたごたで故宮の宝物は四川に移され、
観ることができませんでした。
そこで彼は当時日本で発行された「真美大観」という図録に
載っていた中国絵画を参考にしたそうです。
なんだか身につまされます。
自分も学生時代、展覧会を片っ端から見て回り、
生活費を画材につぎ込んでまともな食事さえままならない日々を送ったものです。
とにかく作品が観たかったし、情報が欲しかった。
あの飽くなき渇望というものは、
文化的に恵まれた環境に育った人には理解しがたいかもしれません。
彼は惜しくも45歳で脳溢血で亡くなってしまいました。
三島由紀夫は「作家という生き物は代表作を書いたらさっさと死ぬべきだ」
と語ったそうです。
確かにつまらないものを描きながら生き永らえても仕方ないのかもしれない。
でも40歳でこの腕前なら、80歳でどれほどの作品を描いたことか。
惜しいことです。